第10回(2月23日アップロード)
これまで、本当のことをお話しすることについてや、
宗教の問題、ホスピス・ケアの実際などを書いてきましたが、
私達のホスピスをちゃんと紹介していませんでした。

そこで今回は、私達のホスピスの紹介をしたいと思います。

 私達のホスピスは、福島県郡山市にある(財)坪井病院の施設として、`90年(平成2年)6月に、日本で6番目のホスピスとして誕生しました。

 坪井病院は`77年(昭和52年)に開設されたのですが、開設当初からがんの専門病院を目指していました。 ですから、がんの患者さんが多いことは当たり前のことですね。
 現在では、入院されている患者さんの80%以上が、がんの患者さんです。

 最近の日本の統計では、早期がんから手遅れの状態のものを含めて、がんの治る率は55%位ですので、約45%位の患者さんは亡くなってしまいます。
 がんの患者さんが増えれば増えるほど、不幸にして亡くなられる患者さんが増えるのは当然のことです。

 こうした患者さんの中から、どうしても助からないのなら最期の時まで自宅で過ごしたいという人が出て来ました。

 今では在宅ケアが重要視されて、訪問看護なども一般的になって来ていますが、当時はまだ訪問看護の制度すらありませんでした。
 そこで病棟や外来の看護婦さんが、空いている時間を使って患者さんのお家を訪問することを始めたのです。

 ところが、患者さんを最期までお家で看取るのは、とても大変です。 ご本人も家族の方々も不安になって、最後は入院させて欲しいと訴えられます。
 そこで看護婦さん達は、はたと困ってしまいました。 お家に居られた間は住み慣れた環境でご家族と一緒に過ごしていたのですから、生活の質(QOL)も良い状態であったのですが、入院すると手術後の患者さんや抗がん剤の治療をしている人たちと一緒になってしまいます。 そうなると、看護婦さん達の眼が今緊急に必要としている人たちの方に向いてしまうのは、やむを得ません。 その分がんの末期の患者さんへのケアが、手薄になってしまいます。

 訪問看護をしてきた看護婦さん達は、こういう患者さんのケアをするベッドが欲しいと思いました。 そして、その希望を財団の理事長で当時の院長の坪井先生(現日本医師会長)に伝えたのです。

 坪井先生の大英断で、病院の最上階の58床の病棟を改造して、18床のホスピスが出来上がりました。

 このような経過があったので、私達のホスピスは、今でも在宅ケアに力を注いでいますし、ホスピスそのものも、在宅で過ごされている患者さんの受け皿的な性格が強いのです。

 在宅ケアが主とはいうものの、ケアを受けた患者さんは、入院された方が在宅で過ごされた方の約4倍です。
 介護者や家庭環境の問題など、まだまだ在宅で最後まで過ごすのは難しいようです。

 ホスピス・ケアの基本は、患者さんが望まないことはしないということです。
 また、患者さんの苦痛(肉体的・精神的なものを含めて)を取り除くために必要なことは、可能な限り行います。
 それが患者さんにとって良いことで、患者さんが望むならば、ホスピスで放射線治療をしたり、抗がん剤を使ったりすることもあります。

 ホスピスでは痛みを取るだけで、あとは何もしないと思っておられる方もあるようですが、決してそうではありません。
 患者さんに残された時間をできる限り快適に、また、自宅で過ごされるのに近い環境を提供するのがホスピス・ケアなのです。

今回は、私達のホスピスのできた経緯をご紹介しました。
次回は、ホスピスの設備をご紹介したいと思っています。