第2回(3月7日アップ・ロード)


「本当のことを話す(いわゆる告知について)」

 前回は、ホスピスとはどんなところかを簡単にお話ししました。

 今回は、「本当のことをお話しする」(いわゆる告知)ということについて考えてみたいと思います。


 がんの患者さんなどに病気についてお話しすることを、「告知」と言っています。 この言葉は、神が聖母マリアに身ごもったことを知らせる「受胎告知」のように使われる言葉で、一般に位が上の人から下の人に向かって何かを知らせるときに使われる言葉だと思うので、患者さんに病気のことをお話しする時には、使いたくない言葉です。

 患者さんは自分の病気について知る権利を持っているのだし、医療を提供するものは患者さんに知らせる義務があります。 患者さんと医者は対等な立場にあるはずで、患者さんは医者に従属しているわけではありません。

 けれども、自分の病気を治してもらいたいと思っている患者さんは、必要以上にへりくだってしまうのも理解できなくはありません。 だからといって、医者が尊大な態度をとって良いということにはならないと思います。

 私も3年前に手術を受けましたが、患者というものが本当に弱い立場にあることを実感しました。
 看護婦さんに「痛くないですか」と聞かれると、多少痛くても「大丈夫です」とか、「我慢できます」とか言ってしまうんですね。本当は痛み止めが欲しいのに…。

 こうした患者心理は、なかなか医者や看護婦に伝わらないものです。 ですから、私たち医療に携わるものは、なおさら患者さんの心を知る努力を怠ってはならないのです。

 人間には、自分で病気を治す力が備わっています。 医者に出来ることは、患者さんが病気を治すお手伝いをすることだけです。

 こんな考えを持っているので、「告知」という言葉を使いたくないのですが、日本語にはこれに変わる良い言葉がありません。 英語では、" Truth telling" という言葉が使われているようです。 とりあえず、ここでは「告知」と言う言葉を使いますが、ちょっと遠慮しながら使っているつもりです。

 どなたか「告知」に代わる適切な言葉を教えて下さいませんでしょうか。


 この問題は色々とむずかしいことが多くて、1回では語り尽くせそうにありません。

 次回も引き続き、この問題を考えていきたいと思っています。