第7回(`00年7月1日)


趣をがらりと変えて、モダン・ジャズの雄 " M.J.Q. " です。

 MJQ (Modern Jazz Quartet) を初めて聴いた時は、まるでクラシック音楽を聴くようなサウンドに驚きました。
 総て楽譜に書いてあるような計算し尽くされた感じで、一体どこがジャズなんだ…と、思ったものです。

 最初に聴いた曲は「朝日のようにさわやかに」" Softly, As In A Morning Sunrise " でしたので、ジョン・ルイスのピアノと、ミルト・ジャクソンのヴァイブの奏でる静かなフレーズから、なおさらそのように感じたのでしょう。

 その後、彼らの演奏を聴いていくうちに、一人一人の卓越したテクニックに合わせて、素晴らしいインプロビゼーションを繰り広げていくMJQの世界の虜になってしまいました。

MJQ-1MJQは、1952年に結成されました。
メンバーはJohn Lewis(ピアノ)、Milt Jackson(ヴァイブ)、Percy Heath(ベース)、Connie Kay(ドラムス)(ドラムスは`54年までKenny Clarke )の4人で、`74年に解散するまで同じメンバーでした。
 (その後、`81年に同じメンバーで再結成され、その初のライブが " Reunion at Budokan " というアルバムになっています。なんと、武道館なんですねー。)

 ジョン・ルイスが軍隊でケニー・クラークと知り合って、帰国後の`45年にクラークがジョンをディジー・ガレスピーのオーケストラに紹介したのだそうです。
 その後`49年にマイルス・デービスのバンドに加わり、そこでジョンとミルトが、出会いました。
 このバンドのリズム・セクションが、MJQの核となっています。
 初めは " Milt Jackson Quartet " だったのですが、間もなくジョン・ルイスがリーダーとなって、MJQとなりました。
 " John Lewis Quartet " ではなく、MJQという統一されたコンセプトを持っていて、4人がそのコンセプトに沿った演奏をしているところに大きな特徴があるようです。
 ミルト・ジャクソンは自分のカルテット(メンバーはピアノがホレス・シルバーに変わっただけで、あとはMJQと同じ!)を結成して演奏していますが、ミルトの持つ黒人特有のブルース感覚が前面に出て、MJQでの彼とは全く違った雰囲気です。

MJQ-2それはともかく、一度MJQの演奏を聴いたら、きっと忘れられないでしょう。

 " Django "、" Concorde "、" La Ronde "、" Cylinder "、 " Bag`s Groove "、 " Skating In Central Park "、" Vendome "、" Exposure "、" Fontessa "、" I Remember Clifford "、" The Jasmin Tree " etc.,etc.…

 彼らの創り出す世界に引き込まれてしまいます。

 MJQの代表的なアルバムの一つに、1960年のヨーロッパ・ツアーのスロヴェニアでのライブ録音(CD2枚組)があります。
 (このアルバムには" Dedicated To Connie " 「コニーへ捧げる」とのタイトルが付けられていますが、ジョン・ルイス自身が1995年に「今までで最も素晴らしい演奏だ」とのコメントを書いています。)
 この中の" How High The Moon " を、聴いてみて下さい。
 これが、あのElla FitzgeraldやDuke Ellingtonが演奏したのと同じ曲かと思うほど、印象が違います。
 どちらがいいとか悪いとかではなく、MJQの(と言うより、ジョンの)コンセプトを知る上では、まさにうってつけのような気がします。
 ジョンは、バロック音楽が好きで、特にフーガ形式に興味を持っていたそうで、随所にその片鱗を見せています。

 ジョンは、映画音楽でも素晴らしいものを残しています。
 特にロジェ・ヴァディム監督の「大運河」の中の" Venice " や " The Golden Striker "、ロバート・ワイズ監督の「拳銃の報酬」の" Odds Against Tomorrow " などは、マイルス・デービスの「死刑台のエレベーター」に匹敵する傑作だと思います。

 モダン・ジャズのピアニストと言うと、セロニアス・モンク、バド・パウエル、ビル・エバンスなど枚挙に暇がありませんが、ジョン・ルイスも彼らに勝るとも劣らないピアニストだと思います。
 ただ、彼らほど自分を前面に押し出すことはなく、端正な雰囲気を保ちながらMJQのリーダーとして長年活躍してきたことは、偉大なジャズ・ミュージシャンであることの証だと思います。

 コニー・ケイが1994年に亡くなり、ミルト・ジャクソンが今年の10月に亡くなって、オリジナルのMJQの音は、CDやLPレコード以外では聴くことができなくなってしまいました。