第12回 (`01年7月14日 アップロード)


`01年6月27日、名優ジャック・レモンが、"がん"で亡くなりました。 享年76歳でした。

コメディ・タッチの傑作が多かったのですが、シリアスな演技も超一流でした。

こんちゃん年代の人にとっては、青春時代から今に至るまで、一緒に過ごしてきた俳優の一人ではないでしょうか。

今回は、彼を偲んで、ビリー・ワイルダー監督の「アパートの鍵貸します」をお送りします。


アパートの鍵貸します(1960年)
第33回(`61年)アカデミー賞 作品賞、監督賞、
オリジナル脚本賞、編集賞、美術賞、


監 督:ビリー・ワイルダー
脚 本:I.A.L.ダイアモンド、ビリー・ワイルダー
撮 影:ジョセフ・ラシェル
音 楽:アドルフ・ドイッチュ
美 術:アレクサンドル・トロネール
出 演:ジャック・レモン、 シャーリー・マクレーン、 
    フレッド・マクマレイ、 レイ・ウォルストン、 
    ジャック・クラスチェン、 デビッド・ルイス 3世、
    ホープ・ホリデイ、 ジョアン・ショウリイ、 
    ナオミ・スティーブンス、


あらすじ

ポスター C.C.(バド)バクスター(ジャック・レモン)は、従業員31,000人を越す大手の保険会社に勤めるサラリーマンである。
 彼は上昇志向が強く、出世のためなら手段を選ばない生き方をしてきた。
 例えば、重役達の情事に自分のアパートを貸すことも、その一つである。

 この夜も部長が帰った後、眠りにつこうとしているときに、課長(レイ・ウォルストン)に無理矢理頼み込まれて部屋を貸すはめになってしまい、公園のベンチで一夜を過ごすのだった。

 この話を聞き込んだ人事部長のシェルドレイク(フレッド・マクマレイ)は、昇進を餌に自分にも部屋を貸すように迫る。
 お相手は、バクスターが密かに好意を寄せているエレベーター・ガールのフラン・クーベリック(シャーリー・マクレーン)であった。

 フランは、シェルドレイクが自分を遊び相手としか考えていないと知り、別れようとするのだが、口説き落とされてしまい、ミュージカルを見に行く約束をしたバクスターを振ってしまう。
 その夜、フランはコンパクトをバクスターの部屋に置き忘れて帰った。コンパクトを見つけたバクスターは、それを部長に渡すが、コンパクトの鏡は割れていた。

アパート-1 クリスマスの夜、フランとシェルドレイクはは会社のパーティの後でバクスターの部屋で逢うが、フランは部長がプレゼントの代わりに100ドル札を出したことで彼が離婚する気持ちのないことを知り、バクスターの部屋にあった睡眠薬を飲み自殺を図る。

 帰宅して、ベッドでぐったりしているフランを見つけたバクスターは、隣の部屋のDr.ドレイファス(ジャック・クラスチェン)の助けを借りて、懸命に介抱するのだった。

 この事故を隠し通したバクスターは、部長補佐に昇進した。

 数日後フランを迎えに来た義兄(ジョニー・セブン)は、バクスターがフランを弄んだと勘違いし、彼を殴り倒してしまう。

 何日か後、ふとしたことでフランの割れたコンパクトを見たバクスターは、部長のお相手がフランであったことを初めて知るのだった。

 シェルドレイクがフランを遊び相手にしていると知ったバクスターは、部長に重役専用トイレの鍵を投げつけて、会社を辞めてしまった。

 シェルドレイクとフランの密会を目撃した秘書のオルセン(エディ・アダムス)は、かっては自分も遊び相手の一人だったことも含めて、彼の妻に告げてしまう。
 そのために妻に離婚されてしまったシェルドレイクは、大晦日の夜にフランに結婚しようと迫るが、フランは自分が愛しているのはバクスターだと気づき、バクスターのアパートへ駆けつける。
 アパートに着いた時、ドアの外でピストルのような音を聞きつける。
 急いでドアを開けてもらって中へ入ると、その音はバクスターがシャンパンを抜いた音だった。

 二人は乾杯し、ジン・ラミーを始めるのだった。 


ロマンチック・コメディの傑作

アパート-2 名監督ビリー・ワイルダーと、ジャック・レモン、シャーリー・マクレーンが初めて顔を合わせた、ロマンチック・コメディの傑作です。(この三人の組み合わせは、`63年製作の「あなただけ今晩は」でも再度実現しています。)

 出世競争、不倫、自殺未遂など、気が滅入りそうな暗い話なのですが、素晴らしい脚本とワイルダーの名演出で、都会派のロマンチック・コメディに仕上がっています。

 ジャック・レモンは、ウォルター・マッソーと共演した「おかしな二人」シリーズで、よく知られていますね。

 この作品でも、出世欲とフランへの恋心の間で揺れ動くバクスターの心のひだを見事に演じています。
 このシーンは、27階のシェルドレイクの部屋へ呼ばれて行くところですが、いかにも嬉しそうです。

アパート-3 彼は大学を出てから舞台で活躍していましたが、「私の夫(ハズ)は二人いる」で映画にデビュー、二作目の「ミスター・ロバアツ」で早くもアカデミー助演男優賞を獲得しました。
 `59年のマリリン・モンロー、トニー・カーティスと共演した「お熱いのがお好き」では主演男優賞にノミネート、続いてこの「アパート・・・」でも同じく主演男優賞にノミネートされました。(残念ながら「エルマー・ガントリー」のバート・ランカスターに奪われてしまいました。)

 シリアスな作品でも「酒とバラの日々」(`62)、「チャイナ・シンドローム」(`79)、「ミッシング」(`82)などで主演男優賞にノミネートされていますが、受賞したのは`73年の「セイヴ・ザ・タイガー」(日本未公開)のベトナム帰りで業績不振な自分の会社に放火して保険金詐欺を企む経営者の役でした。

 「酒とバラの日々」のアル中の役や、「ミッシング」の演技もよかったのですが、やはりコメディ・タッチの作品のほうが、こんちゃんは好きです。この作品や「あなただけ今晩は」のパリの街娼のヒモになる巡査の役などは、秀逸ですね。

アパート-4 シャーリー・マクレーンは、`34年にヴァージニア州リッチモンドでワシントン・シンフォニーの指揮者だった父と元女優の母の間に生まれました。
 バレエ学校を卒業した後に、16歳でブロードウェイのミュージカルに出演、舞台で活躍していましたが、`55年の「ハリーの災難」で映画にデビューしました。
 この作品でアカデミー主演女優賞にノミネートされましたが、残念ながら「バターフィールド8」で娼婦の役を演じたエリザベス・テイラーにさらわれました。
その他に「走り来る人々」(`58)、「あなただけ今晩は」(`63)でアカデミー主演女優賞にノミネートされ、`83年の「愛と追憶の日々」で主演女優賞を獲得しました。

 その他にも「画家とモデル」(`55)、「カンカン」(`60)、「オーシャンと十一人の仲間」(`60)、「噂の二人」(`61)、「青い目の蝶々さん」(`61)(`54年にこの作品の制作者スティーヴ・パーカーと結婚しましたが、`82年に離婚)、「黄色いロールスロイス」(`64)、「スイート・チャリティ」(`69)、「愛と喝采の日々」(`77)、「マグノリアの花たち」(`89)、「マダム・スザーツカ」(`88)など、沢山の作品に出演しています。
 若い頃は、愛くるしいけれどちょっと間延びした役どころが多かったのですが、年を取ってからは演技派の女優に変身しました。
 けれども、こんちゃんとしては、この作品や「あなただけ今晩は」、「カンカン」、「スイート・チャリティ」などの愛くるしい役どころのほうが、彼女には合っているような気がします。

 リベラリストとしても有名で、初のアメリカ女性訪中団を組織し、その時のドキュメンタリー「The Other Harf of the sky : A China Memoir」(`75)は、アカデミー賞にノミネートされました。

フレッド・マクマレイ フレッド・マクマレイは、1908年にイリノイ州に生まれました。

 「テキサス決死隊」(`36)、「真実の告白」(`37)、「森林警備隊」(`42)、「深夜の告白」(`44)、「殺人者はバッヂをつけていた」(`54)、「ケイン号の叛乱」(`54)、「ボクはむく犬」(`59)、「フラバァ」(`61)など沢山の作品に出演していますが、善良な渋めの二枚目の役が多かったようです。
 TVドラマのシリーズ「パパ大好き」が好評で、この作品に出演を依頼された時は、良きパパのイメージが壊れてしまうのではないかと出演をためらったそうです。
 この映画が公開されると、ファンから抗議が殺到したそうですが、この後は持ち前の役が多くなりました。

ビリー・ワイルダー ビリー・ワイルダーは、改めて書くこともない名監督ですね。

 1906年にウイーンで生まれ、ヒットラーの台頭期ににアメリカに亡命しました。
 エルンスト・ルビッチの下で脚本を書いていましたが、`42年に「少佐と美女」で監督としてデビューしました。
 初期の作品は「深夜の告白」、「失われた週末」(`45年アカデミー作品賞・監督賞)、「サンセット大通り」(`50年作品賞ノミネート)、「地獄の英雄」など、シリアスなものが多かったのですが、`54年の「麗しのサブリナ」からは、コメディ・タッチの作品が多くなりました。
 「七年目の浮気」(`55)、「昼下がりの情事」(`57)、「お熱いのがお好き」(`59)、「お熱い夜をあなたに」(`72)など、どれも素晴らしいですね。
 マレーネ・デートリッヒ主演の「情婦」や、ジェームス・ステュアート主演の「翼よ!あれが巴里の灯だ」などの作品も、評判となりました。

 写真は「アパートの鍵・・・」のラストシーンの撮影風景です。演技指導が厳しいことで有名だったそうですが、この作品ではジャック・レモンやシャーリー・マクレーンに自由に演技させたということです。


 好きな監督、好きな俳優陣の作品のためか、力が入りすぎて長くなってしまいました。
 ビリー・ワイルダーは、「七年目の浮気」に次いで2回目の登場です。彼の作品は、これからも取り上げることがあると思っています。