第2回(3月7日アップ・ロード)


 今回は、キャロル・リードのサスペンス映画の傑作、「第三の男」を取り上げてみました。


第三の男(イギリス、`49年製作、日本公開は`52年)


監督:キャロル・リード
出演:ジョセフ・コットン、オーソン・ウェルズ、
   アリダ・ヴァリ、トレバー・ハワード、
音楽:アントン・カラス
撮影:ロバート・クラスカー


あらすじ

 アメリカの作家ホリー・マーチンス(ジョセフ・コットン)は、旧友のハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)に招かれてウィーンを訪れる。ところが、ウィーンで待ち受けていたのは自動車事故で死んだハリーの葬式だった。

 葬式の時に、ホリーは国際警察のイギリス代表のキャロウェイ少佐(トレバー・ハワード)から、ハリーがヤミ屋組織のボスであったと聞かされる。

 ホリーはハリーの死に疑問を抱き、その真相を調べ始めるが、事故の現場に正体不明の”第三の男”がいたことがわかった。しかし、その証人は何者かに殺されてしまう。

第三の男 ハリーがヤミで売っていた粗悪なペニシリンで何人もの死者がでたことを知らされて絶望したホリーは、アメリカに帰ることをハリーの恋人アンナ(アリダ・ヴァリ)に告げに行くが、その帰りにハリーの姿を見てしまった。

 ホリーは観覧車のある公園でハリーと再会するが、秘密を知ったためにハリーに殺されそうになる。

 ホリーは、ハリーを逮捕しようとするキャロウェイ少佐に協力するが、ハリーはウィーンの下水道の中を逃げ回った末に、射殺されてしまった。

 アンナは、ホリーが友人を裏切ったことを許さず、本当のハリーの葬式の後で、ホリーの前を振り向きもせずに歩きすぎていく。


オーソン・ウェルズと、チターの音色にしびれた

 グレアム・グリーンの原作をキャロル・リードが監督した、サスペンス映画の傑作です。

 「第三の男」は、映画を観る前にテーマ・ミュージックを聞いていました。

 タイトルにチター(ギターを横に寝かせたようなオーストリアの民族楽器)の弦が映し出されて、その弦が振動してテーマ曲が流れ出すのを聴いて、鳥肌が立ったのを思い出します。

 第二次大戦が終わった後、ウィーンは米・英・仏・露の四カ国に占領されて、ソ連と他の三ヶ国の占領地区との間の往来は、かなり厳しく制限されていたようです(それはドイツでも同じでしたね…「ベルリンの壁」)。

 まだ空襲の跡が廃墟のように残っているウィーンを舞台としたこの映画は、空襲を経験した私の思い入れが深くなるのも、やむを得ないかも知れませんね。

 アンナのアパートからの帰り道でハリーを見てしまうのですが、あのシーンは目に焼き付いています。

 廃墟のようなウィーンの街角を、猫が歩いていきます。その猫が、道路の向かい側の物陰に向かって「ニャーン」と啼いてすり寄っていくのです。誰もいないところに寄っていくはずはないと思って見るのですが、真っ暗で何もみえません。そこに車のヘッドライトがあたり、ほんのつかの間ですが薄笑いを浮かべたハリーの顔が浮かび上がります。

 このシーンでオーソン・ウェルズを初めて見たのですが、あの一瞬の存在感には圧倒されました。キャロル・リードの演出や、ロバート・クラスカーの撮影技術によるところも大きいとは思いますが、俳優としてのオーソン・ウェルズは、「第三の男」の演技が最高だったのではないでしょうか。(監督としても、自ら出演した「市民ケーン」、「黒い罠」他、沢山の素晴らしい作品を残しています。)

 「ハリー・ライムのテーマ」(主題曲)は、誰もが一度は聴いたことがあると思います。この曲で、初めてチターと言う楽器を知りました。このテーマ曲の他にも、「ウィーンのカフェ」とか、枯れ葉の舞う歩道をアンナが歩き去っていくラストの場面に流れる曲(題名は忘れた!)など、アントン・カラスの演奏は、この映画の印象を更に深いものにしてくれたのだと思います。

 アリダ・ヴァリは舞台女優の役を演じていますが、ちょっと憂いを含んだ冷たい美貌がぴったりのはまり役でした。車に寄りかかってアンナを待っているホリーの目の前を振り向きもせずに歩きすぎていくラストは、やはり名場面の一つと言えるでしょう。

 ジョセフ・コットンはオーソン・ウェルズに食われてしまって、損な役回りだったようです。


 今回は、ちょっと長くなってしまいました。

 次回をお楽しみに…(待っていてくれるでしょうか (^_^;)